ハローワールド

【インタビュー】「安心して家で最期を迎える」という文化を根付かせたい。医療法人社団焔(ほむら)やまと診療所の理事長 安井佑さんの考える「在宅医療」とは

2015.7.27

施設情報

いまの時代、自分の家族とともにずっと暮らしてきた安心できる家の中で、大好きな家族に看取られながら最期を迎える人はどれくらいいるのだろう。
「病院で亡くなる」ということが当たり前だと思っていた私は、それについて疑問に思ったこともありませんでした。
考えてみれば、昔の日本では「最期は家族に面倒をみてもらい、家で亡くなる」というのが当然でした。それはごく自然なことで、当たり前のように周りもそうだったからという理由だけではなく、死にゆく当事者が選択していたのかもしれません。現代の医療のように、高度な医療技術が発達したがゆえに、延命治療を受け、最期を病院で迎えるという選択肢しかないというのはなんだかさみしい気もします。
「最期の選択」を目の前に差し出されたとき、あなたならどうしますか?

yamato1 やまと診療所 代表:安井佑さん
http://yamato-clinic.org/
【専門】総合内科・形成外科
【経歴】
2005年 東京大学医学部卒
国保 旭中央病院(初期研修)
2007年 NPO法人ジャパンハート ミャンマーにて国際医療支援に従事
2009年 杏林大学病院
2011年  東京西徳洲会病院
2013年4月より現職

―この仕事を始めたきっかけや今までの経緯を教えてください

「大学卒業後、発展途上国の支援を志し、ミャンマーで国際医療支援活動をしていました。基本的にミャンマーで病院に行けるのはお金がある人だけなんですね。せっかく病院でも、お金を払った分しか治療を受けられないし、先払いだから“まずは治療”なんてことにはならない。ということは、ほとんどの人は高度な治療を受けられないし、病院は高いので、一般のミャンマー人はあんまり病院に行かないのにまず驚きました。」

―日本の医療制度とだいぶ違いますね。ミャンマーで医師生活をしている中でとくに感じたことや想いは?

「上記でも話しましたが、ミャンマー人は病院に行かない(笑)。だから平均寿命が大体50歳くらいなんですよ。日本で病気になったら、こんな治療ができて、あんな手術をして、、、とか色々考えられると思うんですけど、ミャンマーの人達はそもそもの考え方が違いました。」

ミャンマーの人達の死に対する考え方を聞き「美しい」と感じた

「ミャンマーの人はみなさん「輪廻転生」という考え方がベースです。現世の人生では徳を積むために生まれ、徳を積むと来世でいい人生が送れるというのが根底にあります。なので生死はワンセット。あるとき、心臓病でもう助からない20代半ばの子を診たんですね。それを彼女に告げたあとに、生まれて死ぬという循環の世界の中で、ごく自然にそのことを受け入れて去っていく後ろ姿を見て、美しいと感じました。日本では“生きることが正しい”というベースですが、無理に延命するわけではなく、見送ってあげてもいいという考え方になりました。」

yamato2

―ミャンマーでのご経験が「家で看取る」在宅医療のベースになった安井さん。診療所を始めたころと、今では何かかわったことはありますか?

「やまと診療所」は今年で3年目になりました。たとえば、高齢者の方でも「病院に通うのがつらいから在宅医療医療を選択した」という患者さんもいるし、若いけど末期ガンの方など様々な患者さんがいらっしゃいます。始めたころは、少し抵抗があった患者さんなどもいましたが、地域の病院からのニーズや、患者さん個人個人との信頼が少しずつ蓄積され、患者さんの数はどんどん増えているので、どんどん「在宅医療」という診療形態が認められてきているように感じています。

―今後の「企業理念やビジョン」を教えてください

この診療所の理念は「その人らしさを最後まで支える」というものです。
その人生なんだから、その人が主役になるように寄り添うことを大切にしています。当然ですが、在宅医療で最期を迎える患者さんご本人にとっても、ご家族にとっても、病気も死ぬことも初めて経験することなんです。ですから、おじいちゃんや息子さん、おばあちゃんや娘さんそれぞれに、自分らしく生きる最後をきちんと見てほしい。そしてそれを家族で共有することで、「死」というものを意識して、心に灯を宿してもらいたいですね。
医療法人焔(ほむら)としては、「医療人を育てる」ということ。患者を診るプロは医師なわけですが、在宅医療において大切な「寄り添う」という役割は、その道のプロ(PA)の役割。常に命の現場に接し、色んなことをフォローしながら仕事をする「医療人としてのプロ」がどんどん育っていけばいいなと思っています。」

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―最後に安井さんにとって「医療」「介護」「福祉」とは?

「医療とは、疾患や病気に関する部分で、僕ら医者が一番強みを発揮する部分ですね。介護が
支えてくれているのは現実的な「食う、寝る、出す」ということ。福祉は、社会生活を営むための社会とのつながり、概念ではないでしょうか。3つ全てが連携していけることが理想ですね。」


現代の日本において病院で人が亡くなる割合は約80%。それに比べ、在宅で最期をむかえるという人は、なんと8%なんだとか。やまと診療所を利用した患者さんやそのご家族のほとんどは、「最期をむかえるのがお家でよかった」言ってくれるそうです。
その人自身もその家族も、生死にむきあえる「在宅医療」。繋ぐだけじゃない、新しい形の「生命の現場」を見せてもらえた気がします。

佐久間良美

佐久間良美

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