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2021/04/02

心理士コラム第2回「配慮事項から共生社会を考える」

先日、障害者雇用について解説をする機会がありました。正確にお伝えするために制度やデータを確認し直していたのですが、ふと2018年の制度改定の時期のことを思い出しました。

 

障害者雇用は、障害のあるなしに関わらず誰もが平等に能力を発揮する機会を持つ、平たく言えば誰もが一緒に生きていこうという共生社会を目指すための制度です。社会の変化に合わせて少しずつ制度も変化しています。2018年には障害者雇用の対象者に精神障害の方が含まれるようになりました。

制度改定の前後には、多くの企業様から精神障害の方を雇い入れたいというご相談をいただき、有難いことに就職の時期を迎えた利用者さんを採用して下さった企業様も多くありました。そのような企業様は、卒業生が配属される部署の上司や先輩方、人事の方などが集まってどう接したら良いか、どんなお仕事を任せれば良いのか、熱心に勉強して下さいました。私自身は障害のこと、お仕事のこと、接し方のことなどをお伝えする立場にはありましたが、逆にたくさんの気づきをいただく場でもありました。

 

いくつかの企業様からいただいた言葉で、とても印象に残っていることがあります。

それは

「この配慮事項ができれば誰にとっても働きやすい職場になりますね」という言葉。

どういうことかというと、例えばこんな配慮をお願いします。

・仕事の指示は、やってほしいことと期限を具体的に、明確に伝える

・仕事やスケジュールの変更、イレギュラーは前もって伝えておく

・報告と相談が必要な事項と、自分で判断して良い事項とを区別して合意しておく

また、間違いをしたら指摘しても大丈夫なのかというご質問をよくいただいたのですが

仕事ですから指摘はして下さい。何をどうすれば良かったのか、今からどう対応すればよいのかをあわせて指示して下さい

とお願いしていました。

このような配慮や対応に対しての反応が

この配慮事項ができれば誰にとっても働きやすい職場になりますね」だったのです。

 

この言葉に私はハッとしました。

考えてみれば、お願いしたことはどれも当たり前のことです。障害のあるなしに関わらず、誰もがそうなれば良いと感じる内容でしょう。もちろん、そうは言っても意識して努力しなければ実現するものではありません。指示を具体的に明確に、という1つをとっても、ではどのようにしたら良いかと考えると実行は難しいものです。それでも、そうなれば誰にとっても良いということには変わりありません。実際に数か月後には、障害者雇用の方だけでなく職場の全員に対して配慮事項を意識したことで働きやすい職場になったと話してくださる企業の方もいらっしゃいました。

 

このことは、共生社会とは何も特別なことではないということを教えてくれました。

障害のある方が一緒に働いていく社会を、私たちは共生社会だとかダイバーシティだとかインクルージョンだとか、特別な言葉で表現します。ですが企業様が努力して実現して見せてくださった共生社会の姿は、当たり前のことが当たり前にできるように、皆が少し意識しあい、努力しあう職場のことでした。そしてそれは誰にとっても働きやすい職場のことでした。

実現することは簡単なことではないかもしれません。でももしも障害者雇用が広まることで、誰もが働きやすい職場を作っていくことができることができるのであれば、1つでもそんな職場が増えていくお手伝いができれば良いなと願っています。

 

<筆者について>
心理士・石川

キャリアカウンセラー・臨床心理士。
大学生の就職支援、長期離職者や就職困難者のキャリアサポート、働く方を主な対象とした心療内科のカウンセラー等を経て就労移行支援事業所の支援員となる。
現在は直接支援から離れて支援員の育成や支援プログラム整備などに従事。

     
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