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2020/12/09

事例でわかる!ハローワールドの就労移行支援~双極性障害・Aさんの場合~

こんにちは、株式会社ハローワールドです。

今回で3回目となる、『事例でわかる!ハローワールドの就労移行支援』。利用者さんが就職に至るまでのストーリーを、間近で見てきた支援員と一緒に紐解いていきながら、ハローワールドの支援内容について知っていただくマガジンです。

今回は、担当支援員の「宮原さん」と一緒に、とある双極性障害の利用者さん(以下、Aさん)の事例についてご紹介します。

挫折からの再起をかけた入所

「半年以内に、事務職の仕事に正社員で就職したい」
数年前の夏、ハローワールドに初めて訪れたAさんはそう言いました。
Aさんは、初対面の私たちから見てもわかるほどに焦っていました。30代の時に手に職を付けようと専門学校に入ったものの、挫折してしまい中退。スキルも経験もないまま40代に差し掛かったことでその焦りが限界に達し、藁にも縋る思いで広告で見つけたハローワールドに相談をしに来たそうです。

Aさんは双極性障害で、中でもうつ傾向の強い方でした。うつ状態の症状が不安や焦燥感を加速させ、「半年以内」という希望を打ち出させたのでしょう。しかし、彼の様子を見ているとそれは現実的でないと私たちは感じました。正社員で働くとしたらなおさらです。今のままでは、たとえ就職できたとしても、安定して働き続けることは難しいのではないか。そんな懸念を抱える中で、Aさんの支援が始まりました。

「就労準備性」に関する考え方のギャップ

自ら半年以内の就職を希望しただけあって、Aさんは訓練に対して非常に前向きでした。たとえ気持ちが落ち込んでいる日でも休まず通所していましたし、事務職に必須のPCスキルなども着実に習得していくことができました。しかし、Aさんと私たちの間には、依然として就職に対する考え方にギャップがあるままでした。

皆さんは、「就労準備性」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。就労準備性とは、働くことについての理解や生活習慣、作業遂行能力や対人スキルなど、働くにあたって職種や障害の有無を問わず必要とされる力のことです。

参考:就業支援ハンドブック2020

私たちから見た当時のAさんは、就労準備性、中でも対人スキルにまだ不安があると見受けられました。
社会人経験が決して豊富ではなかったAさんは、「職場のコミュケーション」に慣れていませんでした。また、自分への自信のなさや不安を隠すため、自分を大きく見せる癖がありました。その結果、職場を想定したコミュニケーションが求められるハローワールドの事業所内においても、支援員や他の利用者に対して「友達」のような距離感で接してしまうことがしばしばありました。もし職場で上司に同じように接してしまえば、仕事への姿勢や社会人としての自覚が疑われる…ということにもなりかねません。その事を面談の場などで伝えてはいたものの、少しでも早く正社員として働きたいAさんはなかなか納得がいかない様子でした。

遠いゴールに目を向けるあまり、自分自身の現在地を見失っていた

そんなある日、暗い顔をしたAさんから相談を受けました。通所1年目の冬のことでした。

「他の利用者の方から自分の振る舞いについて心無い言葉をかけられ、今後の訓練や就職活動への自信がなくなってしまった」
その言葉自体は相手方の一方的な思い込みによるものではありましたが、それはAさんの心の奥で抑え込まれていた不安を爆発させるには十分なものでした。もともとAさんは自分に自信がなく、人に対して尊大に振る舞うことでそれを誤魔化していたところがありました。それを指摘され、Aさんはすっかり自信を失ってしまったようでした。

しかし、これは今まで自分の課題に目を向けてこなかったAさんにとって、変わるチャンスでもありました。私たちはすっかり落ち込んでしまったAさんに言いました。
「人から指摘されて落ち込むということは、何か心当たりがあるということです。ですが一方で、Aさんにはこれまでの訓練を通じて出来るようになったことも沢山あるはず。一度ゆっくり、今の自分と向き合ってみませんか?」

Aさんは、就職という遠いゴールを見据えるあまり、自分自身が見えなくなっていました。しかし、ゴールに無理なくたどり着くためには、自分の現在地を把握したうえで進み方を考えることも重要です。自分のできていないことから目を逸らしてがむしゃらに進み続けるのではなく、まずは自分自身と向き合い、足りない部分を埋めていきましょう。その提案を、Aさんは受け入れてくれました。

個別に時間を設け、Aさんのこれまでについて振り返りました。コミュニケーションへの自信のなさから、他の利用者さんと仲良くすることに気を取られてしまい、「職場でのコミュニケーション」という意識が頭から抜けているときがあったこと。社会人経験が少ないことに大きなコンプレックスがあり、それを隠すために自分を大きく見せるような立ち振る舞いをしてしまうこと。何度も話し合いを繰り返すうちに、Aさんにも「今の自分」の姿が見えてきたようでした。
職場を想定したコミュニケーションスキルの習得と、社会人としての自信の醸成。この2点が、面談を通じて導き出された、これからのAさんの課題でした。

自分と向き合うことで人は変われる

その面談を終えてから、Aさんの態度は大きく変わりました。無意味に自分を大きく見せることもなくなり、社会人としての振る舞い方や仕事における人との距離感などを着実に身につけていくのが目に見えてわかりました。

またその頃から、Aさんは企業実習に取り組むようになりました。これは、社会人経験の少ないAさんが職場に慣れ、実際の仕事を通して自信を養うことが目的でした。
以前のAさんなら、「実習なんていいから、早く実際に就職したい」と言い出しかねないところでしたが、その時には「時間をかけてでも、しっかりと経験を積んで準備を整えたうえで、自分に合った仕事に就きたい」と、積極的に色々な企業の実習をこなしていきました。
また実習を通じて、「この職場の雰囲気は自分に合っているか?」「仕事内容は魅力的だが、勤務時間などを考えると自分には難しいかもしれない」など、その企業が自分の希望と合っているかについても考えるようになりました。

自分自身と向き合い課題を乗り越えていったAさんが、自分に合う職場を見つけるまでそう時間はかかりませんでした。企業実習を行う中で、「上司や同僚と話しやすい環境」や「レベルが高すぎず、かつやりがいのある事務の仕事」という、Aさんにとってほぼ理想の会社に出会うことができたのです。さっそく支援員が企業に実習後の評価を確認したところ、企業担当者からの反応は上々。その後まもなく、正社員としての内定を貰うことができました。「ハローワールドで訓練を受け、そして何より自分自身について理解できたことが、自分にとって納得のいく就職に繋がった」と、Aさんも嬉しさを隠せない様子でした。

その後ほどなくして、Aさんはその企業に入社。入社直後は不安や緊張があったものの、企業担当者からは「早い段階で周囲とも打ち解けていたし、業務も問題なくこなせている」というお言葉を頂くことができました。
現在Aさんは、ハローワールドの定着支援事業所を利用しながら仕事を続けています。

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以上、訓練の中で就労準備性を身に着け、自分とマッチした企業への就職を成功させたAさんの例でした。

コミュニケーションの課題などは、自分では気づきにくいもの。第三者から見た客観的な意見がわかるのも、就労移行支援に通うメリットの一つです。
「自分ではうまくやっているつもりだが、仕事の人間関係でトラブルになりやすい」「自分のコミュニケーションに満足していないが、どうやって改善すればいいかわからない」という方は、就労移行支援で専門の支援員に相談してみてはいかがでしょうか。

私たちハローワールドは、関東エリアを中心に就労移行支援事業所や自立訓練事業所を運営しています。今回登場した支援員・宮原さんが在籍している吉祥寺事業所をはじめとして、各事業所にて見学や相談を随時受け付けております。少しでも興味がある方は、是非ホームページをご覧ください。

ハローワールドの就労移行支援・詳しくはこちら

それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

     
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